男「お前って米好きだよなー
女「そんなことないよ。
男「何かにつけて米ばかりじゃん。他に好きなものあるのか?
女「うーん…あっ、あれが好き。
男「おっ、何?何?(プレゼントのネタになるな…)
女「サラダ。
男「サラダ?普通だなぁ…
女「ライスサラダ。
男「……えっ、ライ…何…?
女「あっ、ドレッシングとかマヨネーズとかは要らないの。素材の味そのままがいいの。
男「…それって、そのまんま生米じゃ…
女「今から食べにいこうよ美味しい店知ってるんだ。
男「店あんのかよ!
女「駅前の喫茶店なんだけどね。裏メニューなんだ。私だけトクベツなのよ。
男「…おそるべし、米愛…
男「駅前の喫茶店…ここってフツーのサ店じゃねーか…
女「?どんなの想像してたの?
男「え…いや…なんか…米俵でも置いてるのかと…
女「…それ、良いあいでぃあだね…マスターに聞いて、置いてもらおうよ。
男「いやいやいやいやいや、忘れて!忘れて!
女「とりあえず、入ろうよ。
男「あ、うん…
カラン…カラーン…
マスター「いらっしゃーぁい…おう、あんたか。久しぶり。
女「ご無沙汰してます。あ、いつもの二つ下さい
マ「おや、隣の兄さん…新しいお客さんだね。…いきなりいつもので…いいのかい?ホントに?
女「?ええ。
マ「そうか…まあ、すぐできるから、まっててくれや。
男「…いきなり…って…何なんだ…?いつもの…って何なんだ…?
男「やっぱり…フツーのコーヒーが…
女「まあまあ。いちど試してみなよ。美味しいんだから。
マ「お待ち。兄さん、済まないがとりにきてくれないか?
男「えっ、あ、はい…
マ(…兄さん、彼女のコレかい??
男(えっ、まあ…その…
マ(…まあまあ、皆まで言うな。分かってるよ。あんたも好きなんだなぁ。
男(えっ、まあ、はい…?
マ(うちじゃあかなり変わってる客なんだが、あんたもこういうの好きとなると、正式なメニューに入れるべきなのかな。
男(……は?
マ「あ、すまないすまない。はい、『いつもの』コーヒーだ。意外とイケるぞ。
男「…なんだ、フツーのコーヒーじゃないか…。
女「おそいぞーウェイター
男「はいはい…今行きますよ…と。
女「いただきます。
男「はい、いただきます。
男「!…………
男「……………コレ…コーヒーだよな…?
男「…なんで…?そこはかとなく…まずくは…ないけど…なんだこりゃ…?
女「!マスター!コレ、変えたでしょ!いつもと違う!
男「!あぁ、やっぱり違うんだ、コーヒーと何かいれ間違えたんだな?
マ「おっ、わかるかい?流石だな。何だと思う?
男「??
女「山形庄内産ササニシキ!!
マ「あたり!お見事!
男「米なのかよ!!!!!!
男「どーゆうコーヒーだよ…
女「いや、やっぱりブランド米は違う。
男「コーヒーなんだからブランド豆っていえよ…
マ「はっはっはっ…やっぱりおみとおしだな。コレが解るのはおまえさんだけだよ。
女「まあね。
男「…他にも頼む奴がいるのか…
マ「兄さん、結構いけただろ。コレ。
男「…え、た、確かに…材料にはびっくりしたけど…
女「…素質、あるでしょう?
マ「ああ、驚きだ。兄さん、あいつに似てるんだよな…
男「??
女「マスター、じつは…ゴニョゴニョ…
マ「!!!なんだって!そうかそうか!!はーどうりでそっくりなわけだ…。
男「何二人で納得しあってんだよぅ…
女「こっちの話よ。あら、嫉妬?
男「ちげーよう。ふんだ。
マ「いや、まあオジサンもそんな歳じゃないからなあ。はっはっはっ。
女「ふふっ。あ。マスター、あのサラダちょうだい。
マ「あぁ、アレか。よし、じゃあ今日は気合い入れてつくるからな。新しいお客さんを常連さんにしなきゃなっ!
男「…何が出るんだろうな…
男(こいつ…いつもよりニコニコしてるなぁ…まさか…マスターのなんかじゃなかろうな…)
マ「へい、裏おまち!
女「わーきたきた!
男「お待ちって…居酒屋じゃないんだから…、 …!
マ「特製、ライスサラダだ!
女「嗚呼…コレの為に生まれてきたようなものよね…うっとり…
男「こっこれは…!!!!!
マ「どうだい、兄さん。わかるかい?これがなんなのかが…!!
男「……………米ですやん!!おまんまですやん!!
女「見た目はただの米…だがしかし!そのキレ!そのコク!その味は!
男「このフレーバー…テイスト…まっ、まさしく…
マ「ふっ…、久し振りにいいシゴトさせてもらったよ…
男「……………米ですやん!!おまんまですやん!!…ん?あれ、旨い…かも…
女「あー…しあわせ…も…イキそう…
男「こらこらこら。でも…ただの米なのに…サラダなのに…
マ「おいしいだろう?普通の米じゃあこうはいかない。違いがわかる人だけが、コレの美味しさに気付くんだよ。
男「…知らず知らず…俺まで米色に…染まっていたなんて…
女・マ「「違うよ。
男「うおっ、ハモった
女「ね、マスター。わかるでしょ、この原石の価値が。磨けば…
マ「ああ、とんでもない素質だな。さすが、あの人の息子だよ。
男「???
女「ごちそうさまー
男「結局…全部食っちまった…
マ「どうだい?うまかっただろ?
男「え、ええ…あ、やべ、バイトの時間が!
女「あら、もうこんな時間…間に合う?
男「駅前だしなんとか…!わりぃ、行かなきゃ!お勘定!
マ「いや、いいよ。新規ご来店記念に、今日だけはタダにしとくよ。
男「ホントに?ぜひ、また来させて下さい!わりーけど、先いくわ!
女「いってらっしゃーい。…マスター、どうおもう…?
マ「素晴らしいな…なんであんなのが世間に埋まっていたんだ…
女「ええ…さすが…ライスクイーンの息子…
マ「おまえさん、だからあの兄さんをつれてきたのか?
女「まあ…お米の美味しさ…知ってほしかったから…
マ(ま、ほんとはコイツなりにデートしたかったんだろうな…w)
男「…米…か…あのマスターとあいつ…どんな関係なんだろな…もやもやするなぁ…
男「ただいまー
母「おう、お帰り。
男「ぬぁーバイトつかれたー…けど明日のレポート書かなきゃ…
母「たいへんだな、青年よ。ずいぶん稼ぐじゃないか。バイト代はいったら8割よこせよ。
男「あーはいはい…んーねむいよー…オフクロー、コーヒーいれてくんないー?
母「シャワーでもあびりゃいいじゃないか…まったく…ソファーで寝るなよ…寝たらヤっちまうぞ…
男「あーはいはい…とびっきりの頼むよー…zzz…
母「…疲れてんだね。これじゃコーヒー飲んでも効かなそうだな…
男「うーん…やめてくれ…米を…いれないで…そんなとこ…あっ…はいらな…あっあっ…あっ…
母「どんな幸せな夢みてるんだか…、あ!そういえばシューちゃんからアレ、もらったんだっけ…
男「…ぅーん…ぁふぅー…
母「久し振りに…アレ…いれてみるか。
………………
母「いいかげん、めざめなさい!
男「ぅわあっ!女王の教室…あれ?んぁ…寝ちゃったかな…
母「言われたとおり、とびっきりのコーヒーをいれたぞ、疲労青年よ。
男「…んぁ、ありがとう…いただきまーす…
母「久し振りに女王の腕を奮ったんだ。至高の腕と究極の素材、とくと味わぅがよか!
男「ん… !!!!…これ…どこかで…あれ…?えと…魚沼産…って、なにいってんだ俺わぁ!
母「ほう、やるじゃないか。いかにもコシヒカリだよ。
男「な、なんでこれを!?
母「シューちゃんがお前にこれでコーヒーいれてあげて、って言ってたからな。
男「…おふくろ…なんでこのコーヒー…駅前のサ店の味とおんなじ…いや…それよりも美味い…っじゃなくて!なんで俺分かってんだ!?
母「おぅ、眠気もとんだな。レポ、がんばんなよ。
男「…シューが…これを…
男「…意外だなぁ…このコーヒー、はやってんのかな…
女「くしゅん!…私も…クイーンのコーヒー…飲んでたいなぁ…