小麦粉


 とるるるるるる

女『やあ。君の家でこれから一緒に料理作りたいんだが、いいかな』
男「え? いや、こっちから行くけど……」
女『駄目だ。たった今、厨房出入り禁止令が出された』
男「ああ………………待て。今度は何をやった?」
女『何を考えている? 漫画のキャラじゃないんだぞ、わたしは。
  爆発したり、飲食不可能なゲテモノなんか作ったりしない』
男「まあ、確かにご飯料理はおまえ、うまいけど」
女『小麦粉料理だよ』
男「ああ、小麦粉。お菓子?」
女『台所中が粉まみれになって怒られた』
男「はは、漫画みたいなドジっ娘だなあ。小麦粉ぶちまけるなんて。
  その程度で出入り禁止か? 神経質だな、おまえの親も。
  おまえの親ならそのぐらいでいちいち切れるとも思えないけど」
女『まったくだ。粉塵爆発というものを試してみたかっただけなのに。
  全然火がつかなかった。小麦粉ももうないし、君の家にないk』



   がちゃんっ




 とるるるるるる

女『おーい』
男「…………」
女『…………わたし、メリーさん。いま、あなたの家に向かってるの』
男「切るぞ」
女『こらこらこらこら! 料理だって言っただろう! 粉塵爆発はまた今度! お菓子を作りたいんだ!』  
男「今度はねーの! 永遠にこないの!」
女『わたし、メリーさん。いま、あなたのおうちの前よ』
男「!」(窓から外をのぞく)
女『やっほー』(家の前で手を振っている)
男「…………はあ」
女『もしもし、わたし、メリーさん。自分の名前さん付けするイタイ女』
男「……いま、鍵あけるよ」

 がちゃがちゃ

女「小麦粉は途中で買ってきた」
男「で、何を作るんだ?」
女「これ。これ作りたい!」
男「ああ、袋に載ってるレシピね」
女「違う違う。これ。こっち」

〈ご注意〉

●油で揚げるお菓子などを作る時は、次のことを必ず守ってください。
 そうしないと、生地(きじ)が破裂して油が飛び散り、、やけどをする危険があります。
●ドーナツ、アメリカンドッグなど水で練った生地の場合は、小麦粉100gに対し、
 ベーキングパウダー3g以上と砂糖10g以上の両方を必ず入れてください。
●スペイン風揚げ菓子など熱湯で練った生地の場合は、必ず星型の口金で絞り出し表面をあらくしてください。


女「ドーナッツにする? スペイン風揚げ菓子にする? ねえねえ!」
男「………………」

  どんッ――――――ぎいいいい――――――ばたんッ

女「おーい?」
男「『スーパーフライデー ビートたけし緊急SP“やってはいけない”』で取り上げてくれるように、
  テレビ局に投書でもしとけッ!」
女「………………」




 とるるるるるる

女『もしもし、わたし、メリーさん。いま、あなたのすぐ前まで来ているの』
男「…………」
女『もしもし、わたし、メリーさん。大好きな人に嫌われちゃいました。ちょうど小麦粉とライターがあるので、
  もう一度粉塵爆発を試すわ』
男「…………」
女「…………うわッ! やっぱつかない!? なんで? ああ、もうッ!」
男「…………」
女『もしもし、わたし、メリーさん。いま、家に帰るところなの』
男「小麦粉片付けてけッ!!!!!!!!」