危険作


女「新ジャンルだ」
男「また始まった」
女「新ジャンル『ジェンダーフリー』!」
男「……あなたはどこの千葉県知事ですか?」
女「いやいやいや、君の考えていることはわかってる」
男(やめれ、としか思ってないんだが)
女「巷で喧伝されているジェンダーフリーは確かにおかしい点が多い。そこを完全に修正し、
  新しい『萌え』を提供したい」
男(やっぱりわかってねぇ……)




〜男の自宅

男「…………パトカー?」
女「やあ、遅かったな。( ^ω^) と ξ゚听)ξ の足止めは効いたようだな」
男「ちょwwwwおまwwwwwwwなにやらかした!」
警官「下着泥棒だよ」
男「ほんまにおまえかあああああああああ!!! 下着って」
女「君のおパンツをたんすから引っ張り出しまくって、奇声を発しながら
  放り投げまくったり、かぶったり、乾布摩擦に使ったりしていたところを、運悪くおばさんに見つかった」
男「……………………………………………………(ボスけて、天国の父方のおじいちゃん)」
母「まあ、あんたの友達だし、お母さんのじゃないから別に良かったんだけど、
 『ここは通報しますた、だろ?』って言われて、ついふらふらと」
男「ふらふらとって、なにがふらふらとだよ……」
母「たいしたことしたわけじゃないけど、被害者ヅラして呼んでくれって頼まれたから」
男「いや、被害者。明らかに俺、被害者だから」

警「…………というわけで、えー、奥さんも一緒に来てもらえますか?
  一応、事情聴取っぽいことはしとかないと。まあ、初犯だし、事を荒立てたくないようなら
  きつく叱ってすませときますが」
俺(違う……初犯じゃねぇ……こいつは、シュールの常習犯なんだッ!)
母「あー、わたしはちょっと用事があるんで、かわりにこの子いかせてよろしいですか?」
俺「俺ッ!?」
母(ガンバッ!)
俺(老後に一人で生きていけるよう、今のうちから資産運用ちゃんと考えとけよ、ババァ!)




〜警察署・少年課

婦警「で……身元引受人、いくら電話してもご両親が『居留守です』しか言わないから、
   学校の先生にきてもらうことになったし」
女「こいつのために、お手数おかけします」
俺「お前だッ!!」
婦警「…………お友達?」
女「違います。パンツを盗みに入っただけの仲です」
婦警「…………で、何でこんなことやったの? ふつう、やるのは男の子でしょ」
女「だからやった」
婦警「え?」
女「これぞ、新ジャンル『ジェンダーフリー』! 愛の形のみならず、歪んだ愛の形においても
  男女は同権平等でなくてはならない! だから、やった」
婦警「………… ( ゚д゚ )」
男(こっち見んな――――――(涙)
女「わが人生に一片の悔いなし!」
婦警「………… ( ゚д゚ )」
男(だから、こっち見んなああああああああ!!)

女「と、言うわけで」

  がさごそ

男「こ、こら! なに脱いでんだ!」
婦警「ちょ……あんた…………ッ!」
女「じゃーん!」(高々と掲げられた手には男のパンツが)
婦警「ちょ…………それ………………」
女「なに、男が女のパンツ履く以上、女も男のパンツ履かなきゃな」
男「……それは『男』じゃなく、『変態さん』だ」
女「大丈夫。ちゃんと下に自分の履いてるから、ノーパンじゃない。残念、無念、珍念、米」
婦警「…………ホントに、あんたら知り合いじゃないの?」
男「違います」
女「変………………ッ身!」

  すぽっ

男「かぶるなあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
女「大丈夫。これ、脱ぎたてのじゃなくて新しいやつだから」
男「ちが――――――――――う!」
女「雑菌が湧くからな、君も、うちからもって行くときはちゃんと新しいのにしろよ?」
男「もって行くかあ!」
女「一回使ってそれっきりにするならともかく、永久保存版にするんならなおさら」
男「俺は自宅から1000枚を越える下着類が発見された犯人じゃねえええええええええ!」
女「そもそも、布地の質、面積ともに、男のパンツは雑巾代わりにちょうどいい」
男「古いタオルとかシーツでやれッ!!」
女「女の下着なんて、雑巾にしづらくてしづらくて。
  かぶってよし、嗅いでよし、雑巾にしてよしの男の下着にハアハアだ。
  女はもっと男の下着を盗むべきだよ。ねえ、少年課のお姉さん?」

婦警(…………なんでかしら?
    まともな反応を示してる少年より、頭にブリーフかぶったまままともなこと言ってる娘のほうが
    正常な人間に見えてくる………………なんなの、このシュールな光景は?
    ここ、警察の少年課よね?
    まわりで同僚が相手してるのは万引きや喧嘩した子たちなのに、何でわたしだけ!?)

女「名前はジェンダーフリーマスク・ピュアホワイト!」
男「ほかにも仲間いるみたいな名前つけるな」
女「ちょっと黄色いインパクト♪」
男「マジで殺すぞ」
女「仲間にジェンダーフリーマスク・トランクス! 正体は渡辺!」
男「マジで佐藤に殺されたいのかおまえは」
女「必殺技>>300
  敵組織>>320
  決め台詞>>340」
男「安価つけんなッ!」

女「あ、決め台詞思いついた」(男の手をとり、自分の胸に)

  むにゅ

男「………………////」
婦警「……………………」
女「やめろ、それはわたしの雪見大福だ!」
婦警「……………………(こ、こんな娘、どうしろっての!? ボスけて、天国のお父さん――)」
婦警「……あ、あのね、変態仮面ごっこはわかったから、ああ、もういいから、じっとしてて。
   先生来るまでおとなしくしてて。ケータイ見てても漫画読んでてもいいから!」
男「職務放棄すんなあああああああああ!」
女「何を言っている、まるで人を変態みたいに」
男「変態だろうが!」
女「?」
男(ほ…………本気で今の言葉がわかってねえ!!!)
女「さっきも言ったように、これは新ジャンルだ。人間の、新しい可能性。稲作に次ぐ、
  第二の文化大爆発。わたしはきわめて理性的に考え、行動しているぞ、君のために」
男「わかった……わかったから。普通の恋人同士はこんなことしないから!」
女「………………」
男「なんだ、その目は?」
女「…………バカだな。
  せっかく他人のフリをしていてやったのに、自分から恋人同士だとばらすなんて」
男「――――――――――――ッ!」
女「まあ、だから君のことが好きなんだがな」(パンツかぶったまま、ぽっ)
婦警「………… ( ゚д゚ )」
男「だから、こっち見んなっつってんだろーがああああああああ!」




先生「どうも、お手数おかけしました。ほら、お前も一応形式的にでも謝れ。 警察もお役所だから、形式さえ整ってれば何をしてもいいんだ」
婦警「………………ピキピキ」
男「………………(神かッ! うちの担任は!!)」
女「…………」
先生「…………」
男「…………」
婦警「…………」
女「…………米?」
婦警「何で米ッ!? しかも疑問形ッ!? 形式は!? ねえ、君、形式はどこに行ったのッ!(涙)」
俺「山のあなたの空遠く……ってとこじゃないすか(涙)」
先生「よし、じゃあ、帰ろうか。  おい、おまえ。ちゃんと一緒に本屋で反省文の書き方のテンプレ集、買ってやれよ」
男「反省させる気、微塵もねぇ――――ッ!」
先生「先生はな、給料以上の無駄なことはしたくないんだ」
男「無駄ッ!? ああ、無駄かッ!! (号泣)」
女「…………」
男「…………」
女「…………」
男「…………」
女「…………怒ってる?」
男「あきれてる。もう、怒る気にもなんねぇ」
女「…………」
男「…………」
女「…………ごめんなさい」
男「…………いや、いいよ」
女「…………嫌いになった?」
男「…………」
女「…………」
男「…………」

  ぎゅっ

女「…………!」
男「俺以外にはするなよ? (なでなで)」
女「…………米」











女「ああ、実は君の靴下を履いてるんだが、これも返しといたほうがいいかな?」
男「…………まだあったんかいっ!! (涙)」