中学生日記


中学生日記 ノーカット版(笑)
元々書き込むために削る前の原文にちょっと誤字脱字などを修正したもの。
補足とかもあるので読みやすくなってるかな?





当時中学生だった私には、友達というか、話をする人がいなかった。
別に体が弱いわけではない。ただ、少しおとなしい性格だったからだろう。
誰も私に近づかなかった。というよりは、忘れられていた。

男「俺もガチでお前の存在に気づかなかったからな。」
女「すぐ後ろにいたんだけどな。」
男「・・・・・。」

別に私は一人ぼっちが嫌いなわけではなかった。友情に溺れるのは愚かなことだと思い込んでいた。
そんなある日、友達がいないことを先生が心配してくれて、私は保健室に追いやられた。
そこで私は保健の先生とカウンセリングを行なった。もっとも、私は友達を作る気などなかったのだが。
先生は「まず一人、友達と話してみないか?」といった。私は賛成しなかった。
次に先生はこういった。
「話すのがやなら、こうしよう。誰か一人、友達をからかって遊んでみないか?」
私は即答した。
「やります。」



誰をからかうかはくじ引きで決めた。引いた番号は21、シュウだった。
先立つ不幸をお許しください。

まず手始めに私は相手を観察した。
体格はどちらかというと華奢だが、顔を含めいたって平均的だった。
少し情けないが、わりと面白いリアクションをしてくれそうだった。

男「そんなふうに見てたのか。」
女「しかし平均的なのは事実だ。」

まず手始めに、どれほど単純かを確かめた。全く気持ちのこもっていない恋文を書いた。
『少し前からあなたに興味があります。今日の放課後6時ごろに、収瑠公園で会って話をさせてください。』
それをこっそり下駄箱に入れる。さて、明日が楽しみだ。

男「・・・・・。」
女「何を恥ずかしがっている。」

次の日、彼の顔は真っ赤だった。それを見て私はうれしくなった。
その日の彼は、あわてたりにやけたり憂鬱な顔をしたり変化に富んでいた。
私は、その顔を一枚一枚カメラに収めた。 もしほしい人はメールください。
放課後、彼は私の誘導した公園にしっかりと来た。待ち合わせ時間の30分も前に。
私は定時刻に青い目をしたフランス人形をプレゼントした。

男「あれ、マジでビビッたんだよ。空からいきなりフランス人形が降ってきてさ。」
女「ちゃんと『まだ恥ずかしくてあえません。』という手紙も同封しといたぞ。」
男「どっから投げたの?」
女「大きな木の上から。」
男「げ!あそこにいたの!?気づかなかった。」

彼は真っ青になってその人形を抱えたまま走って帰っていった。
次の日、彼は怒るかと思った。そういうリアクションを楽しみにしていた。
しかし彼はその人形を大事に持っているではないか。
それを見た私は少しの敗北感と彼に対する好奇心でいっぱいになった。
初めて毎日が楽しみに思えたこの頃の私。



私はもう一度ためしに別の公園に誘導してみた。
勿論彼はちゃんと来た。会うのは気が進まないんで、矢文でまだ会えない事を伝えた。
これでも昔弓道を習っていた。

男「あの時は死ぬかと思った。何せ俺に向かって矢が飛んできたからな。」
女「あれを君がよけた頃からニュータイプを信じるようになったよ。」

彼は地面に突き刺さった矢から取った手紙を読むとしばらく考え込み、突然学校に戻っていった。
こっそり後をつけていくと彼は手紙のようなものを自分のロッカーにしまったのが見えた。
彼が帰ったのを確認してその手紙を取り出した。意外にも私宛だった。
「もし、顔をあわせたくないならここに話したいことを書いてほしい。下駄箱で文通しよう。」
そう書いてあった。私はしばらくこの方法で彼と話をした。
彼との対話は楽しかった。「まだ会うのは恥ずかしい。」と書いたら「君ならきっと大丈夫さ。」と返ってきた。

腹を抱えて笑った。割とロマンチストなのだな。

男「あの時俺は本気で書いたんだけどな。」
女「あんな歯の浮くセリフを書く奴がまだいたとは思わなかった。
  当時私は笑いすぎて酸欠になったよ。」
男「・・・・・。」

彼は私に対して必死にいろいろなことを書いていた。
まだ顔をあわせたことがないのに。ブスだったらどうするつもりだったのだろうか。

男「・・・そこまで考えてなかった。」
女「・・・・(笑)」

文通(?)を始めて1ヶ月。彼はある日こんなことを書いた。
「もうそろそろお互いのことが分かってきたし、会って話がしたいんだけど大丈夫かな?」
大胆なやつめ。お仕置きしてやる。
「私も決心がつきました。デートしましょう。日時などはまたのちほど。」



私と保険の先生は次なる計画を立てた。
計画の内容は以下のとおりだ。
「今度の休日デート。コースは
 家電製品店→ホームセンター→お好み焼き屋→卓球場→某寄生虫館→私の水田
 と進んでいく。」
ちなみに先生はシュウが最後まで付き合うに、 私は寄生虫館で力尽きるに3000円賭けた。
ちなみに何も知らない彼はク男とツ男にデートのことを自慢していた。
何もかも知っている側から見ると愉快だ。

男「・・・思い出しただけで情けなくなる。」
女「まあそう落ち込むな。私は楽しかったぞ。」

その日の帰り、私はデートコースなどを手紙に記した。
翌日、彼はOKを出した。全く、どういう神経をしているのだか。
しかもこんなことまで書いてあった。
「下手に気取ってなくって、肩の力が抜けている。
 そういう君に、ますます会いたくなった。楽しみにしてるよ。」
また少し、負けた気がした。



当日、家電製品店の前で待ち合わせをした。
彼は本当に来た。会うや否やこう言い出した。
「ああ、待たしてごめん。俺は、シュウって言います。 えーっと・・・・隣のクラスの子?」
同じクラスだ。だがあえてそれについては触れないでおいた。
「ううん、たいして待ってない。私はシューっていいます。 いつも会えなくてごめんね。」
普通の女の子のふりをしてみた。
「へぇ、同じ名前だな。不思議だね。」
彼は笑った。近くで見ると特徴のない顔だというのがよく分かる。
「じゃあ、行こうか。」
「うん、買い物につき合わせてごめんね。」
「べつにいいよ。じゃあ、行こうか。」

家電製品店で私は炊飯器を買った。彼は顔色一つ変えず、その荷物を持ってくれた。
普通なら、おかしいと思うのではないのか?デートで炊飯器なんて。
私は首をかしげながら次のポイントへ向かった。

男「当時俺は炊飯器が壊れたんだなーぐらいしか考えなかった。」
女「ある意味お前すごかったよ。」

ホームセンターでは彼がいろいろなことを教えてくれた。
本棚はどういうのがいいとか、どのネジがどういう性質かだとか。
ホームセンターに行くと聞いて一生懸命家具について調べている彼を思いうかべると
少しほほえましかった。わりと努力家なのだな。 ただポケットからカンペがはみ出てるぞ。
にしても、初デートにホームセンター。私は顔色変えずそれを受け入れる彼が少し怖かった。



さて、ムードもへったくれもないお好み焼屋さんで食事だ。
彼は「こういうの好きなの?」とニコニコしながら聞いてきた。
はっきりいって、もう少しあわててくれと思った。
さっきから負けっぱなしだ。どうしようか。
とりあえず、海鮮モダンを食べた。おいしかった。

お好み焼を食べて腹が膨れたら、運動だ。
我々は卓球場へ向かった。
ちなみに卓球は、私の十八番だ。
圧勝した。彼は息を切らしてた。 わりと体力はないらしい。
「シュー、君、スポーツ得意なんだね。かなわないよ・・・。」
またいつでもかかってきなさい。

さて、本日のメインイベント、寄生虫館。
案の定彼は真っ青だった。
入って5分もしないうちに彼は2度吐いた。しっかりと専用の袋を持ってきてるところが泣ける。
私はこういうのは大好きなので、普通に見れた。
彼は無理をして吐きながらもそんな私についてくる。
そんなに私が好きなのだろうか?少し罪悪感を感じた。
結局彼は寄生虫館を見終わるまでに結局5回吐いた。
私には見えないようにこっそり吐いているつもりらしいが、 しっかりとカメラに収めさせてもらいました。
「大丈夫?あんまり無理しないで、もう帰る?」
私はそういって彼のギブアップを促した。3000円だからな。しかし
「だ・・・大丈夫だよ。次、いこうか。」
深き緑色の顔で彼は笑ってそういった。
そんな顔の彼を見て私も吐きそうになった。



さて、私の田んぼについてしまった。3000円はあきらめるとしよう。
計画では、私はここで彼にドッキリだったことをバラすことになっていた。
「へぇ、ここ、シューの田んぼなんだぁ。」
何のんきなことを言っている。まだ顔が青いぞ。
「ねえ、シュー・・・。」
彼は(青いけど)真剣な顔で私を見ている。やっとお遊びだと気づいたか。鈍感男め。
「俺・・・君のことが好きだよ。」
「・・・・・え・・・?」
・・・・場が凍りついた。こんなことを言われるのは計画外だ。回避の方法が分からない。
「ほら・・・でも・・なんか私とあなたって何となく合わなそうだし・・・。」
とか言って適当にはぐらかしてみた。それでも彼の顔は変わらなかった。
「別にいいんだ。君は君の好きなものがある。
 それを回りを気にせず貫き通す君が、かっこよかったんだ。」
私の好きなもの・・・・それは・・・シュウをからかうこと・・・だけど・・・
「君は一生懸命好きなことを楽しめばいい。僕はそれの手助けをしたいんだ。」
彼は少しかみながらそういった。たぶん昨日一生懸命考えたプロポーズなんだろう。
シュウは真剣だった。真っ直ぐ私を見ている。
「・・・・いいよ。」
私はそう答えてしまった。今回、シュウと付き合って(からかって)楽しかった。
こいつとなら、一緒にいても悪くないかもしれない。そう思ったのだ。
まんまと保健の先生にはめられたわけだ。

女「で、現在に至る。」
男「・・・・・・。」
女「ちなみにあの後、保健の先生と考えた遊びだということをばらした。」
男「・・・・・・。」
女「そしたらシュウは、田んぼにぶっ倒れた。」
男「・・・・・・。」
女「本気で気づかなかったらしい。おめでたいやつだ。」
男「・・・・でも、君が好きだよ。」
女「不屈の精神だ。これからもよろしくな。」